BitteR SweeT StrawberrY
あたしは、ズキズキと痛む心を抱えたまま、ゆっくりとケイの顔を見上げた。

「あの・・・あの人・・・ケイと・・・元通りになりたいんだね・・・」

「そうみたいだな」

「どう・・・するの?」

「ん?」

「あの人と・・・また・・・付き合うの?」

「どうかな・・・・」

そのあやふやな返事を聞いて、あたしの心は、遂にしくしくと泣き出した。
きっと、ケイは、迷ってるんだ。
ケイは以前、嫌いになって別れたんじゃないって言ってた、むしろ好きのままだったって。
だとしたら、それは、今もあの人が好きだってことに・・・ならないのかな?
そう思ったら、心だけじゃなくて、あたしの目からも急に涙が溢れ出てきてしまった。

そうだよね・・・

大体、女の人が女の人を好きになること自体がおかしいんだし、やっぱり、相手が男の人なら、普通に考えなくても、男の人と付き合うほうが自然だし・・・・
ましてや、好きなら・・・
当然・・・

あたしは、必死でそう自分に言い聞かせる。
だけど、そう思えば思うほど、あたしの心はどんどん切なくなっていく。
寂しくなってく。
哀しくなってく。

あたしは、思わずその場で立ち止まった。
それに気付いて、ふと、ケイも足を止める。

「優子?」

「ご・・・ごめん、なんでもないよ・・・なんでも・・・ない・・・・」

そこまで言ったら、あたしの目にたまっていた涙が、ぼろぼろとほっぺに零れ落ちてきた。
それに気付いたケイが、ちょっとだけ驚いたみたいに、あたしの顔を覗きこんでくる。

「どした?なんだ急に?」

「ううん・・・何でもないの・・・ほんとっ、なんでもないから・・・
ごめんっ、ほんとごめんねっ
あたし、おかしいの・・・・っ
気にしないで・・・っ」

あたしは、片手でほっぺの涙を拭って、くるってケイに背中を向けた。

「ケイは、きっと、あの人のとこ・・・戻ったほうがいいよっ
あたし、そう思う・・・っ
頼りになりそうな感じだし・・・っ」

「ん???何言ってんの?おまえ?どうした?ほんとに?」

ケイは、きょとんとした声でそんなことを聞いてくる。
あたしは、ぶんぶんって首を横に振って、半分、泣き声になりながらこう言った。

「あたしが、この間・・・好きって言ったこと・・・忘れていいから・・・っ!」

そしてあたしは、ケイに振り返らないまま、マンションに向かって猛ダッシュした。
ケイの視線が、走ってくあたしの背中にあるのが判る。
振り向きたいけど、振り向いたらダメだって自分にそう言い聞かせて、あたしは、マンションのエントランスに飛び込んだ。
涙が止まらなくて、あたしは必死に目をこすりながら、エレベーターに飛び乗って、自分の部屋に駆け込んだ。

「ぅう・・・っ、うぅっ・・・」

馬鹿・・・
馬鹿・・・
あたし、なんでこんなに馬鹿なんだろう・・・
そうだよ・・・
諦めないと・・・
だって、ケイは、あたしと同じ女なんだから・・・
どんなに好きでも・・・
諦めないといけないんだよ・・・

あたしは、ぺたんって玄関に座りこむと、もう、ほんとに、転んだ子供みたいに体を震わせて、思い切り声を上げて泣いたのだった。

< 75 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop