犬との童話な毎日

お義母さんはあれから少しだけ変わった。
嫌味に織り交ぜてだけど心配してくれているんだな、と感じる事もある。
お見舞いに来てくれた大好きな旦那様には、泣きながらごちゃごちゃな私の汚い感情を吐き出した。
私の醜い本心も真剣に受け止めてくれた。

このお腹に宿る生命は、もう無かったことには出来ない。
確かに旦那様と私が芽生えさせた生命だから。

次の朝。
眠りながら、お腹の上に乗せていたらしい右手が暖かくなった気がして目が覚めた。
何かに指を摘ままれた気がした。
泣き腫らした厚ぼったい目で、あたしは白いカーテンの中で、そっと目を閉じる。

ねぇ。
本当にここに、あなたは居るのね。

お腹に乗せた右手をそのままに、小さく囁く。
カーテンの向こうは、明るくなり始めていた。


・・・・・・・
・・・・・・・

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