犬との童話な毎日

閉じられていた目がゆっくりと開き、あたしを見上げた。
黒曜の鼻先でスマホをゆらゆら揺らしてアピール。

可愛いでしょ!
沙月ちゃんの赤ちゃんだよ!

にこにこと黒曜を見ていると、画面を見つめていた黒曜が、目線をあたしに移した。
あまりにもじっと見つめてくるから、何?と首を傾げる。

『小娘……いや、今更遅いか』

何なのさー、と思ったのと。

「……八坂。今は授業中だが。知ってるか?」

教壇に居たはずの先生の声が頭上からしたのは、ほぼ同時だった。
その声は、いつもよりも低いトーンで……。

み、見上げるのが怖いんですけど……。
< 219 / 311 >

この作品をシェア

pagetop