お蔵入り書庫
 
 そっと、互いの唇に指を這わせて。

 薄紅のリップで艶を乗せる。


 はにかんだ笑顔。

 柔らかな微笑み。


 鏡で見るよりも、現実的。

 だから、鏡なんて要らない。


 薄紅を馴染ませた口許に笑みを浮かべて。

 互いの手と手を合わせて、額も合わせる。


「可愛いよ、揚羽」

「可愛いよ、桜」


 殆ど変わらない声色が交互に響いて。

 どちらからともなく、引き寄せられるように唇を合わせる。

 二人の、特別な時間──
 
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