お蔵入り書庫
 
「──朝から何やってんの」


 その特別な時間を引き裂いたのは、揚羽と桜の妹、柚子。


「何、って。キスだけど。柚子にもしてやろうか?」


 二人見詰め合ったまま、揚羽が答える。

 次いで、桜が眉を寄せて不機嫌に文句を口にした。


「する必要なんてないよ。揚羽は僕だけ見てなよ」

「別にして欲しくも無いし羨ましくもないけど。お願いだから学校でベタベタするのは止めてよ。『禁断の兄弟愛。寧ろ百合』とか言われてるの知ってるでしょ!」


「言わせておけばいいよ」


 妹からの痛烈な批判もものともせず、揚羽の手を引いて桜は部屋を出ていく。

 短い廊下の先にある階段を降りてリビングに辿り着くと、桜は最愛の双子の兄である揚羽をダイニングへと着かせた。


「柚子も分かってるでしょ。僕は揚羽が、揚羽は僕が好きなの」


 二人の後からリビングに着いた柚子は、定位置である桜の隣に腰を落ち着かせる。


「最低のナルシストだよね」

「誉め言葉として受け取っておいてあげるよ。特別にね」


 鮮やかな笑顔ほど憎たらしいものはない。

 沸き起こる怒りを拳に乗せて、柚子はダイニングテーブルを叩く。

 ガチャン、と音を立てて、綺麗に並んだ食器が揺れた。


「別にね、二人のこと軽蔑したりするつもりないけど」

「してたじゃん」

「煩いなぁ。今はしてないでしょ! とにかく、あんたら二人は目立つの! 家の外で変なことしないでよ!!」


 
「変なことって──」


 桜の背後から抱き着いた揚羽は、弟の頤を掬って薄紅の唇にキスを送る。


「──こういうこと?」

「……最低ッ!!」



……to be continued later!


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