お蔵入り書庫
 
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小悪魔な恋人
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『みなさんこんにちは。「お昼の放送」の時間です。今日、3月8日、火曜日の担当は、2年3組、周藤成都[ストウナツ]です』


 毎日、12時半から10分間。

 放送部による『お昼の放送』が校内中に響き渡る。

 火曜日は、俺の親友である成都が当番の日。


 成都の声は、低すぎず、高すぎず、心地よく耳に届いてくる。

 スピーカーを通しても、その綺麗な声は遜色することなく聞こえてくる。

 そんな成都の声を、学校中の女子が待ち望んでいるんだ。


 成都は、校内のアイドル的存在。


 陰では『放送部のプリンス』なんて呼ばれてたりもする、らしい。


『──ただ今お送りした曲は、1年1組の佐久間海羽チャンからのリクエストでした。海羽チャン、どうもありがとう』


 この火曜日の『お昼の放送』を、一体どれだけの女子が楽しみにしているのか、俺には分からないが。

 毎日毎日、飽きもせず、ファンレターやプレゼントが成都の元に届く。

 放送終了後の出待ちをする奴らもいる。

 先月のバレンタインなんかには、成都にチョコを渡したい女子達で大変な騒ぎになった。


 成都は、チョコレートと可愛い女の子が大好きで。

 そんな可愛い女の子にモテる自分が大好きで……。


 ナルシストかよ!

 っていう突っ込みを思わずしたくなるけど、成都が言うと全然嫌味に聞こえないんだから不思議だ。
 
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