カットハウスやわた
バイト、始めました
翌日、私は朝から商店街のベーカリーにいた。二階にイートインコーナーがあり、一階で買ったものを、二階で食べられるようになっていた。一階のパン売場の片隅に小さな冷蔵庫があり、コーヒー牛乳やフルーツ牛乳、ジュースやヨーグルトも売られていた。


大好きなクロワッサンとサンドイッチ、ラスク、フルーツ牛乳を買い、二階にあがった。


中途半端に長めの黒髪が緩くウエーブしている。髪を短くしたほうが絶対似合うはずなのに、まるで売れない絵描きのようだ。カウンター席に座り、窓の外を眺めながらのモーニング。


そんな彼に気づかれないように、私はテーブル席に座った。紙パックのフルーツ牛乳にストローを刺すと、ひと口飲んでから、クロワッサンを口にした。サクッとして、口の中にバターの甘みが広がる。うーん、おいしい!


「幸せそうな顔、しちゃって」


あ、気づかれた。熊野さんが、私の向かいに座った。


「おはようございます。熊野さん」


一応、挨拶だけはしてから、また食べ始めた。熊野さんは、頬杖をつきながらニヤニヤとしている…。視線も気になるが、本人はかっこいいと思ってしているその髪型は、もっと気になる。


視線を振り切るように、今度はサンドイッチに手を伸ばす。たまごサンドのたまごはオーロラソースで和えてある。瑞々しいきゅうりと、分厚いハムのサンドイッチもおいしい。

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