カットハウスやわた
「私……会社の上司から……セクハラされていたんです……」


「セクハラ……」


「はい……。そのたびに、はっきりと『やめてください』って、言っていたんです。それが、昨夜、職場での飲み会の帰りに……」


そこまで言って、少し冷めたコーヒーを一気に飲み干した。はぁ……とため息をつくと、昨夜の一連の事件を思い出し、腹が立ってきた。


「無理矢理ホテルに連れこまれそうになって……。この後が酷いんです!聞いてください!八幡さん」


さっき知ったばかりの名前を、勢いよく呼んで、話を続けた。


「『上司命令だ』とか、『逆らったら、仕事を失うぞ』とか……。ケータイ小説に出てくるイケメン上司だったらイイけれどアブラギッシュなオッサンが!」


遠慮なく、クロワッサンを頬張りながら、さらに話は続く。


「思いっきりオチンチン蹴っ飛ばして、彼氏の家に逃げ込んだら……女と寝てたんです…酷くないですか!?」


「……それで、記憶がなくなるほど……飲み歩いたんだ?」


「……はい……」


私は、ため息のような返事をした。



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