カットハウスやわた
落ち着く居場所
『カットハウスやわた』


見た目は喫茶店のような散髪屋。ドアを開けると、カランコロンと音がする。


「おはようございます」


店主の八幡正海さんは、今朝も座ってスポーツ新聞を読んでいる。八月の終わりには、離婚届を出して、バツイチになる三十五歳。小柄でどっしりとした体付き。色黒で大きな目。


「おはよう」


八幡さんが向けてくれる眼差しは、いつでも温かく、私を見守る親のようだ。そこに恋愛感情があるかどうかは、わからない。でも、私は……。


「あー、リベルタス引き分けか……。ここは、勝ってほしい一戦だったな」


贔屓のサッカーチームの試合結果に目を通しながら、ブツブツとつぶやく。そんな八幡さんを尻目に、エプロンをつけると、ほうきとちりとりを持ち出した。


「掃除、してきまーす」

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