カットハウスやわた
その返事を聞いて、私の腹は決まった。おいしそうなナポリタンが冷めてしまわないように、いただきます……と言ってから、食べ始めた。


喫茶店の、昔ながらのナポリタン。ちょっと甘めなソースで、食べるとやみつきになる味だ。


ひと通り食べ終えた正樹は、アイスコーヒーを飲みながら、私に言った。


「今すぐに……とは言わないけれど、近いうちにオレのマンションに来いよ。前もって連絡をくれたら、オレはいつでもいいから、さ」


正樹は私の返事も聞かずに、勝手にやり直すつもりでいる。それは私が一時的に怒っているだけで、YesもNoもなく、黙ってやり直すと思っているに違いない。


「私は、ね、正樹……」


私は、正樹の目を真っ直ぐに見つめて言った。正樹も、真顔で私をみつめた。


「正樹のルックスが好きだっただけ」


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