HONEY TRAP(1)~上司は身勝手な婚約者~
「佐野部長、どうぞ」

佐野部長は、賑やかにビールと料理を摘まみながら楽しそうにする社員達を脇目に、一人ソファに座って足を組みながら、ビールを飲んでいた。


私は渋面で佐野部長にサラダの皿を差し出す。




「嫌そうな顔だな…」



「だって…」



「…俺が嫌いか?」



「嫌いとかじゃあなくて・・・」



「よかった…嫌いじゃないんだ…安心したぞ」



佐野部長は口許に嬉しそうな笑みを浮かべ、皿を受け取る。



部長の笑みが着火剤のようになって私の頬をみるみる染めていく。その笑顔の裏には、傲慢な野心が隠れ潜んでいるコトを知ってるのに。



私は何でこんな男に頬を染めるんだろう…



「まぁ―座れ」



私の手を引っ張って自分の隣に強引に座らせた。


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