HONEY TRAP(1)~上司は身勝手な婚約者~
「誰だ?落とした唐揚げを拾わないヤツは…」



私の背中越しに聞えるのは佐野部長の怒った声。



「佐野部長…」



長尾君が部長に気づき、視線で私に訴える。




佐野部長は私の落とした唐揚げ君を誤って踏んづけてしまったようだ。



「私です…佐野部長。すいません…」




私は目の前に置かれたペーパーナプキンを手に取り、部長の踏んづけた唐揚げを拾って包んだ。




「羽瀬お前か…」




佐野部長は私だと知り、それ以上は怒らなかった。



そして、また隣に座って来た。



「ランチ終わったら、現場に行くぞ」




「はい、今から楽しみでワクワクしています」


佐野部長と話す長尾君の表情が生き生きとしていた。
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