もう弟なんてやめてやる。
百合が暫く歩いて
動かしていた足を止めた。

少し先で通りかかった先生に
課題を渡している雫が

視界に入って。



「…何であんな子が、陸くんのお姉さんなのよ」


込み上げる憎しみ。
鋭い視線で雫を捕らえる。


すると、

「あ、陸ーっ」


雫がこっちに向かって
走ってきた。

自分への視線に気づかない雫が
百合の横を通過して、

後ろに居る陸へ駆け寄ってく。


「っ、」


あたしは陸くんとは
普段話せないのに。

笑顔なんて…

見せてくれないのに。


嫉妬が全身を纏わりつくように
自分を包み込む。

グッと拳を握りしめた。

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