【完】本当の恋
約束     谷川愛生
幼稚園の遠足の日
「アジサイ組のみなさん。お隣の人と手をつないで先生についてきてください」
「はーい」
隣の子は孝佑くんだ。
「孝佑くん。手つなごう」
「嫌だよ」
「うっ・・」
「何だよ。泣くなよ!」
「だって、孝佑くんが、手つながない」
「分かったよ。ほい」
孝佑くんは照れながら手を差し伸べた。
私は手をつなぐ。
でも、勢いのあまり足をひねって転んでしまった。
「うっ・・うっ・・・」
泣こうとしたとき目の前には孝佑くんの背中がある。
「えっ」
「おんぶしてやるから泣くなよ」
私は涙を拭いて孝佑くんの背中に乗る。
孝佑くんの背中は温かくて安心した。
「孝佑くん」
「何だよ」
「ありがとう」
私は孝佑くんを強く抱きしめた。
「痛いよ」
すると、先生が気づいて近づいてきた。
「愛生ちゃん!孝佑くん!どうしたの!?」
「愛生ちゃんが転んじゃったから」
「孝佑くん。ありがと」
そのあと先生がおんぶしてくれた。
その日から1週間が過ぎた。
私と孝佑くんの家は近所だから一緒に帰っていた。
「愛生ちゃん。公園で遊んでから帰ろう」
「うん。いいよ」
私たちは近くの公園で遊んだ。
「砂遊びしよっ」
「うん!」
私たちは砂遊びした。
「あのね。愛生ちゃん」
「うん?」
「僕、明日からアメリカに行くの」
「アメリカ?」
「うん。とっても遠くの場所」
「じゃあもう会えないの?」
「うん・・・」
「そんなの嫌だ!」
「僕も愛生ちゃんと離れたくない」
「じゃあ、愛生が大きくなったら孝佑くんのお嫁さんになる」
「ほんとに?」
「うん」
「じゃあ、大きくなったら迎えに来る」
「うん!」
チュッ
私たちは約束のキスをした。
小さい頃の約束。
彼はきっと忘れているんだろう。
孝佑くんは私の初恋の子。
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