【完】本当の恋
さよなら初恋   谷川愛生
ずっと大好きだった彼。
12年。
私はずっと片思いだと思っていた恋。
この恋が叶った。
初恋は実らない。
そんなことない。
私たちは12年分の恋をした。
でも、別れは突然で・・・。
『俺たち距離置こう』
孝佑に言われた。
家に行く。
私は孝佑の気持ちを知りたい。
『本当に私のこと嫌いになったの』
私、孝佑のこと嫌いになれない。
どんなにひどいこと言われても、孝佑を信じているから。
でも孝佑の出した答えは別れることだった。
孝佑に必要とされていない。
「孝佑、ありがとう。遊びでも付き合ってくれて。楽しかった」
こんな事思ってない。
本当はこの場で孝佑に抱きついて、好きって伝えたい。
泣いて、伝えたい。
私だけだね。
孝佑のこと好きと思っているの。
これじゃ、重たい片思いだよ。
外は大雨で私の心のように雨が泣いている。
雨の中、傘も差さずに帰る。
涙が雨で消される。
 バタンッ
私はその場でしゃがみ込む。
大声で泣く。
でも、雨で声も消される。
外には誰もいなくて、私1人の世界のようだ。
12年も孝佑のこと思っていたんだ。
すぐに忘れられないよ。
別れがあるなら恋なんてしなくてもいい。
12年間も思っていた初恋の子、孝佑。
私、しばらくの間孝佑のこと好きでいてもいいですか。
次の恋をするまでの間。
次の日、私は風邪を引いた。
気が付けば外は暗くなっていた。
「愛生。熱計った?」
「うん。もう大丈夫」
「桃子ちゃん来てるけど」
「うん」
桃子がお見舞いに来てくれた。
「愛生。大丈夫?」
「うん。ごめんね」
「いいって。それより、矢神さ、引っ越しするってホント?」
私は静かにうなずく。
「明日で最後だから放課後愛くんたち4人で遊びに行こうって。行けそう?」
「うん。行く」
「じゃあ、明日」
「うん。ありがとうね」
「ゆっくり休みなよ」
次の日、私は集合場所の駅に早く着いた。
「愛生っ!」
声のした方を見ると孝佑だった。
「あれ、1人?」
孝佑は一昨日のことはなかったように話しかける。
「う、うん」
 ピロリン~
《 谷川愛生
ごめん。急用ができちゃった。
3人で先に行ってて。
後で合流する!
   野々上桃子》
「あ、孝佑。桃子遅れるから先に行っててって」
「ああ。愛斗も後で来るって」
「じゃあ、先に行こうか」
「そうだな」
電車に乗る。
「風邪は大丈夫なのか?」
「うん。もう元気!!」
「よかったな」
「うん」
「「・・・」」
私たちは黙る。
「「あのさ」」
「あ。先に言って」
「いや。愛生から」
「あのね。今度はいつ帰ってくるの?」
「ああ。しばらくは帰ってこれないかな」
「そっか・・・」
『次はしながわ水族館です』
アナウンスが流れる。
「降りようか」
「うん」
私たちは水族館に着いた。
 ピロリン~
《 谷川愛生
ごめん。もう少しかかる
   野々上桃子》
「あ。先に入っちゃおうか」
「そうだな」
私たちはいろいろな魚を見た。
「愛生ーっ」
「桃子!!」
「ごめん遅くなって」
「ううん。大丈夫」
「あれ、愛くんは?」
「もう少しで着くって」
数分後
吉沢くんとも合流できた。
『間もなくイルカショーが始まります。
「あ、イルカショー行こう!!」
「ああ。行こう行こう!」
桃子と吉沢くんは走って行ってしまった。
「俺たちも行こうか」
「うん」
イルカのジャンプで水しぶきが飛んできた。
「きゃっ」
私は、とっさに目を閉じる。
ゆっくり目を開けると孝佑のジャケットの中で私は濡れていない。
孝佑のほうを見ると、孝佑はびしょびしょ。
「愛生。大丈夫か?」
「うん」
私の心臓はドキドキと脈を打つ。
『こんなに優しくられたら嫌いになんかなれないよ』
「愛生ちゃん。孝佑。大丈夫か!?」
吉沢くんが私たちのところに駆け寄る。
「ちょっと。矢神びしょびしょじゃん!」
「このくらい大丈夫だよっ」
「いやいや。着替えろよ!」
私たちは水族館にあるショップに入った。
「このTシャツで良くない?」
吉沢くんが持ってきたのは大きくイルカのイラストが描かれたシャツ。
「はあ。もっといいのないのかよ!」
「わがまま言うなよ!これで決定な」
「分かったよ」
「フフッ」
「愛生!笑うなよ」
「なんか、幼稚園児みたい」
「うっせえ」
私たちは孝佑を空港まで送った。
「孝佑。帰ってきたら電話しろよ!」
「ああ」
「寂しくなったらいつでも電話待ってるからなっ」
「愛くん泣いてるの?」
「・・泣いてねえよ。こんなやつのためにっ泣くか!」
「分かったよ。お前も元気でな」
「ああ」
吉沢くんは孝佑にピースサインをする。
それにこたえるように孝佑もピースする。
「矢神。あんたは、私の永遠のライバルだから、早く帰ってきなさいよね!」
「分かったよ」
桃子と吉沢くんは泣きたいのをこらえている。
「孝佑。向こうに行っても頑張ってね」
「ありがとう」
「私は寂しくないけど二人が寂しそうだから早く帰ってきてね」
「ああ」
「じゃあ」
「愛生。・・・ごめん」
「え?」
「この前はきつい言い方して」
「ううん。気にしないで」
「愛生。俺は愛生のこと守れないけど俺以上にいい人見つけろよ」
「言われなくとも分かってる」
「じゃあな」
「うん」
《間もなく、アメリカ行き228便が出発いたします。
 まだお乗りでないお客様は急いで搭乗口2番までお越しください。》
「じゃあ、行くわ」
「孝佑っ!俺のこと忘れんなよ!」
「ばかになって帰ってきたら許さないからね!」
「体に気をつけてね」
孝佑は後ろを向いたまま手を振った。
バイバイ。私の初恋。
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