捕らわれ妖精
私はあまり豊かではない胸をぎゅっと寄せて谷間を作り、上目づかい+涙目という私が思う最強コンボを装備して甘えた声でこう言った。
「ねぇ~、大樹様ぁ、お・ね・が・い☆」

しばらく沈黙が流れたあと、大樹様がコホン、と咳払いをした。
そして、「まぁいいじゃろう。一ヶ月だけ魔法で人間にしてやろう。ただし、これからワシが言う注意を守ると約束したらな。いいか?注意することは二つ。一つ、自分が妖精だということを気づかれてはならない。二つ、人間に恋をしたらいけない」 「何で人間に恋をしたらいけないの?」と首をかしげると大樹様はこう言った。
「ここに帰ってこれなくなるからじゃよ。妖精は、純粋でなければならないからじゃ。もちろん、妖精同士なら問題ないがな」
「何で帰ってこれなくなるの?」
「純粋でなくなってしまったら森の門の番人が門を開けてくれないからじゃよ」

森の門の番人といえば、可愛らしいリスさんだったよーな...
そのリスさんが牙をむいて襲いかかってくる図を想像してしまい思わず身震いをする。
ここは約束を守るのが得策かもしれない。


「分かったわ、約束を守る」
大樹様は私の答えを聞いて安心したようだった
「よし、魔法をかけてやろう」
その言葉を聞いて私の心が弾んだ。
はじめからお色気作戦を使えばよかったな。
大樹様はこれでもかってくらいお色気作戦に弱い。


やっと人間界に行けるのね、ついたらまず始めに...と早くも計画をたて始めている私のまわりをまばゆい光が包む。
あまりにも眩しいから目をぎゅっとつぶった。

光が消えたので恐る恐る目を開くと、人間になっていた
「わぁ...」と感嘆の声が漏れる
「さぁ、行っておいで。また、必ず帰ってくるんじゃよ」と大樹様の優しい声が私の背中を押す。
「はいっ!!」と元気よく返事をすると、大樹様は門の番人に門を開けるよう頼んでくれた。
番人のリスさんが門を開けてくれた。
「いってきます!」と、とびっきりの笑顔で言って私はもんをくぐった。

このときの私は知らなかった。
大樹様と会えるのが、これで最後になるなんて...
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