-かなめひめ-
 さて、話しかけたはいいが、この後どうすればいいのだろうか。
 ここで変な時間を使っては、相手に変な気分にさせる...。そう考えた燈は、何とかして話を進める。

 足りない脳と知識と知恵を絞りに絞って導き出した、まるで苦し紛れの答え。
 だが、出さないよりかはだいぶマシだ。

 もうどうにでもなぁれ!...燈は半ば諦めの気持ちでいた。


「シキガミさんのシキガミって、どうやって書くの?」

「...はぁ?」


 燈の突拍子もない質問に、明らかに怪しそうな感情を露わにして、眉を顰めるシキガミ。

 同時に、遠くからこちらを面白げに見つめている玲奈に、思わず殺意が湧いた瞬間でもあった。

 燈は引きつった笑みを浮かべながら、両腕をぶんぶんと小刻みに上下に振り、必死にわかってもらおうする。

 向こうで笑いを堪えたくぐもった玲奈の声が聞こえたような気がして、そろそろ燈の堪忍袋の尾が千切れ飛びそうだ。

 玲奈の姿を見つけ、思い切り玲奈を睨みつける。が、玲奈は逆に思い切り吹き出して、物陰に隠れてしまった。
 くそ、憎たらしい。


 やがて燈はシキガミにじっと見つめられていることが分かり、慌てて視線を変えて困った笑いを漏らした。

 シキガミも少し笑った。



 笑った。



 そんな小さな笑顔に、こんな人でも笑うんだ...と、燈は内心失礼に思いながらも呆気に取られて、シキガミの顔を見つめてしまう。

 シキガミは、机の上に開いた自分のノートに、さらさらとシャーペンを動かした。
 燈は、思わずそれを覗き込んだ。


_____式神


 書いた字はとても丁寧だった。
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