-かなめひめ-
「式に、神って書いて...式神だ。
日本神話でもあるだろ。
他にこんな苗字の奴は一人もいないだろうな」


 シキガミ...式神は、顔に多少の笑みを残したまま、覗き込む燈にそう告げた。

 一方の燈は、頷くことしか出来なかった。
 何故なのかは自分でもわからないが、それしか出来なかったのだ。

 それから、二人の間に沈黙が下りる。


「あ、あの。
私は有宮燈。これからも宜しくお願いします」


 それに気まずいと感じ取った燈は、今の雰囲気を変えようと慌てて式神に自分の名を告げてみた。

 ついでに、右手を差し出してみる。
 一応、握手の意のなのだが...。気づいてくれるだろうか。


「...あぁ、宜しく」


 式神は、燈の意を察したのか、その手に応じて自らの手を重ねた。

 式神の手は、燈の手よりも大きく感じた。無骨な感覚だ。高校生なのに、これまで既にたくさんの苦労や辛い目に逢ってきたかのような...。

 それが、燈は何となくこの手から感じた、ような気がした。


「おー?おー?
早速お二人とも、もうイイ雰囲気じゃなーい?」


 チンピラが人に絡むような感覚で、隠れて見守っていた玲奈が燈の背中に飛び込んでくる。
 突然の第三者に式神は少し驚き、燈は心底嫌そうな表情を浮かべた。


「玲奈ぁ!隠れて見てないで一緒にいてよぉ!」


 燈は玲奈に涙目で縋ると、玲奈はそれを笑って飛ばした。


「ふふん、あたしはあなたの恋の行方を見守るだけの存在....」

「そんなのいいからぁー!」


 まるで漫才のような会話を繰り広げている二人を、式神はキョトンとした表情で眺めていた。


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