Dear・・・

博昭の場合

俺は婆ちゃんの時代からここに住む根っからの地元っ子。


親が元中同士って事で、翔太は生まれた時から知ってる。


三歳の時に隣に二歳上の兄ちゃんが出来た。


俺は姉ちゃんしかいなかったから兄ちゃんって存在が嬉しかった。


血は確かに繋がってないけど、本当の兄貴みたいだった。


翔太と三人でいつも遊んでた。


上の学年に知り合いがいるっていうので、小中と慶介は俺の自慢だった。


慶介が高校に上がって遊ぶ時間は減ったけど、暇があれば勉強を見てくれて、本当に良い兄貴だった。


軽音部で俺はドラム、翔太はベースをやっているって事で、慶介のバンドに誘われた。


最高の気分だった。



智貴も礼人も俺の周りにはいない奴で、新鮮だった。


俺は地元が好きだから、地元の奴らとつるむのも良かったが、バンドのメンツといるときの方が楽しかった。


そして、やっぱり一番は慶介と翔太といる時だった。


でも、そう思っていたのは俺だけだった様だ。


異変に気づいたのは二年前ぐらいだった。


バンドの人気も順調で、インディーズながら雑誌にも載ったりしていた。


そんなある日、翔太の家に遊びに行った。


借りてた物があったからそれを返しに。


翔太のおばさんに慶介も来てると言われ、俺は急いで部屋へ行った。


ノックもせず、勢いよく開けた。


それがまずかった。


二人がどうなってたってわけではないが、空気がおかしかった。


わざとらしく目を逸らす二人。


少し顔が赤らんで見える。


その中に俺の居場所はなかった。


だが俺は、何もないように普通に部屋に入った。


だって俺が今思ってる事は有り得ない事だから。
< 45 / 214 >

この作品をシェア

pagetop