Dear・・・
しかし、それから俺の頭からあの光景が消えなかった。


俺は二人を良く見るようになった。


そして、疑惑は現実味を帯びてきた。


少し距離を置いて冷静に見れば、二人の距離は妙に近かった。


そして、現実味を帯びた疑惑は確信へと変わった。


ある夜、人気のない道を歩いていると前を二人が歩いていた。


俺は声をかけようとしたが、言葉が出てこなかった。


二人は手を繋いでいた。


俺も慶介と手を繋いだがそれはずっと昔。


高校生と大学生が手を繋ぐ理由は一つ。


つまり、そういう関係って事だ。


そして二人は別れ際に軽く口づけを交わした。


それから俺は二人には分からないぐらいに、距離を置いた。


メジャーデビューの話ももちろん断った。


本当は続いたかったけど、それは無理だ。


だって、メンバーにゲイがいるんだ。


俺までゲイの疑惑を持たれかねない。


でも、俺は誰かが嫌いになったわけでも、まして慶介と翔太が嫌いになったわけで抜けたわけじゃない。


だから、ドラムをやった事がない優人が俺の穴を埋めるって話が出た時、俺は快く教えるのをかって出た。


俺にすら関係を言わなかった慶介と翔太の意志を尊重して、二人のことも言わなかった。


このバンドにはぜひ成功してもらいたいし、成功すると信じてる。


俺は気ままな悪者で構わない。


俺は第三者でこいつらの活躍を見守ろうと思う。


そして、週刊誌のチェックも欠かさずに行おうと思う。


慶介が隣に越してこなければ、俺の人生は田舎の地味な話だっただろう。


刺激的な人生をくれたあいつらに俺は感謝する。
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