Dear・・・

帰宅[Kyoko.side]

今朝まで続いていた治の不愉快な行動。


まだ続いていたら、と香子は憂鬱な気持ちを持ちながら玄関の扉を開けた。


「ただいま」


誰からの返事もない。


言葉が空しく中を舞う。


と、リビングから綾が出てきた。


「おかえりなさい」


小さな体で、香子の持つ大きな買い物袋を受け取る。


食材を冷蔵庫に入れるよう綾に頼むと、香子は着替えるため二階の寝室へと向かった。


寝室の扉の前に立つ。


この扉の向こうにはどのような姿で治はいるのだろうか。


今朝の様に、携帯をじっと見つめ続けているのであろうか。


香子は身震いした。


そして、大きく深呼吸をすると寝室の扉を開ける。


と、そこには静かにパソコンに向かっている治がいた。


昨日とは全く違い、落ち着きを取り戻している。


というか、元気がないように見える。


未だに香子の存在には気づいていない。
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