Dear・・・
「ただいま」


驚き振り返る治。


香子の姿を確認した途端に、急いでパソコンの電源を消した。


「おかえり」


その言葉を残し治は部屋を出て行った。


部屋に残った香子は、さっさと服を着替えていく。


部屋の隅に置かれたパソコンが妙に目に付くが、機械に滅法弱い香子は手出しが出来なかった。


治は一体パソコンで何をしているのだろうか。


パソコンの前にいる治を見るたび、香子は気になって仕方が無かった。



キッチンへと向かい、夕食の準備に取り掛かった。


隣では綾が、学校の話などをしながら手伝っている。


治はリビングのソファーに寝そべりテレビを見ている。


今日も香子を送った以外は特に外出していない。


しかし、治は疲れきった様に体を丸め、動こうとしない。


キッチンからは、リビングの様子が良く見える。


しばらくして、和也が学校から帰ってきた。


何も言わずとも、和也は夕食の手伝いをする。


リビングの治の姿はいつの間にか消えていた。


「綾。もうそろそろご飯出来るしお父さん呼んできてくれへん?」


その母の言葉に、綾は素直に二階の父を呼びに行った。


一階は香子と和也の二人きりになる。


香子はテーブルの準備を始める。


その横で和也は母の機嫌を伺いつつ手伝う。


四人揃っての夕食が始まった。
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