獣耳彼氏



それからは君の知っている通りだよ。


椎名に力を与えて君を襲わせた。



秋月のことは好きで嫌いだ。


何でも出来る弟。尊敬する弟。


だけど、ボクの苦労も知らないで人間と。


いや、君と居た秋月。


君を襲おうと思ったのは秋月が君に惹かれてると気づいたからだ。


大事になものを傷つけられたら、さすがの秋月でも悲しむだろう。怒るだろう。


そうでなければ君を狙うことはなかった。


きっとね。ま、もう全て遅いけどさ」



ドカンッ!目の前に立っていた秋夜さんが一瞬で消えた。


代わりにそこには金色の髪が輝く秋月くんの姿。



「秋夜…」



秋月くんが呟く。


ゆっくりと地面に倒れていた秋夜さんが起き上がり口元を腕で拭った。


秋月くんが秋夜さんを見つめる。



「俺は…」


呟く。


「俺は、どんな理由、誰であっても。こいつを傷つける奴は許さない」



舞う。風が吹き、砂が舞う。


静かな秋月くんの怒りが現れる。


その怒りは一体何に対してのものなのか。



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