獣耳彼氏



どこにも私を見ている人など居ない。


皆、部活に励んでいる。


よそ見をしている暇なんてないぐらいに。



(なんなの…一体…)



影といい、視線といい。


気味の悪いことが続いている。


そのことがまた気の滅入る原因ともなってきている。



正体の分からない何か。


幽霊とか非科学的なものは信じてなかった私だけど。


こうも奇妙なことが続くとやはり気になるもので。


ある日見た夢も相まって。



(なんなのよ…)



私の悩みの種はどんどん増えていくばかり。


解決までの糸口が見つからないのが難儀。


ああでも。今日で、今日で部長はどうにかなるかもしれない。


秋月くんという彼氏(フリ)の存在を知らしめることで。



「よし!」


「な〜に。真琴〜」


「一本やるよ」


「え〜」



嫌がる京子の腕を無理やり引き、私は道場の中央へと歩み出た。


気を紛らわすには体を動かすのが一番。


私は時間になるまでひたすら京子や部長以外の男子部員と手合わせを続けた。



そして…



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