風神さん。


場所は変わり、今は馬車で二人は揺られている。
依頼主の居る所、隣町のサザンカに向かうために。


「えっと、詳しい事は向こうで聞くんだけど、一応大まかな内容だけ説明だけしとくね」

広い馬車の中で二人はわざわざ隣同士にくっついて依頼書を覗き込む。

「依頼主は大手芸能音楽ギルド、「男女奏」<ウーマンテット>に所属するディエヴァさんみたいだね…この人、なかなか有名だよ、よく公演の話とか聞くけど」

まず男の子は依頼主の説明から入る。カンナヅキには有名と言われてもピンとはきていないが。
男の子にはそれは予測していた事で、最低限の情報だけ話して次に進む。

「で、内容が違法魔法「呪歌」<ジュカ>を扱う魔導師を捕らえる事…みたいだね」

カンナヅキは聞いたこともない魔法のせいか、そのまま復唱する。
男の子も困ったような顔をする。

「僕も「呪歌」<ジュカ>なんてあんまり聞かないからなぁ…簡単に言うと、呪いの歌で呪い殺す、ってのがそうみたいだけど」

男の子は唸りながら自身の髪の毛を引っ張っている。
カンナヅキはなんとなく想像をしてみるが、具体的な事までは想像できなかった。
すると、馬車をひいていた男が、二人にもうじきサザンカに着くことを知らせた。
馬車に揺られて20分程度でつく隣町だ。

「そういえば」

カンナヅキは何か思い出したように呟いた。




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