【完】ズルい瞳[短編]
あれは……忘れもしない。
私が中学生に上がろうという年。
「あおい、俺……家出ることになったんだわ」
「え………」
家が近所で、お互いのお母さんも仲が良かったということもあり
私はちょくちょく蒼ちゃんの部屋に遊びに行っていた。
でも、その日なぜか蒼ちゃんは朝から自分の荷物を段ボールへと積み込んでいて
「な、何してるの?蒼ちゃん」
一抹の不安を抱えて尋ねたんだ。
「引っ越し。俺……大学、地元じゃねぇ場所選んだから」
「な………!?」
蒼ちゃんが大学生になることはわかってた。
だけど、まさか家を出てしまうということは
………初耳。
「や、やだよっ!蒼ちゃんが遠くに行っちゃうなんて絶対にイヤ!」
私は咄嗟に、その大きな蒼ちゃんの背中にしがみついたのだけど
「悪いな、あおい。でも俺にも叶えたい夢があるんだ」
蒼ちゃんはそう言うと、私の頭をポンポンと優しく撫でて……そして、少しだけ淋しそうに笑ったんだ。