【完】ズルい瞳[短編]
あれから5年。
蒼ちゃんは一度として、実家に戻るようなことはなく
その後、蒼ちゃんのママに連絡先や携帯のアドレスを聞き
幾度となく、連絡はしてみたけど……その返信は全く来ないまま
この衝撃的な日を迎えたのだった。
本来なら“嬉しい!”と思う場面のはずなのに
“どうして?”“何で?”
私の頭には疑問符ばかりが浮かんでくる。
「キミ達は受験生で、忙しいということも重々承知している。だが、やるべきことはやってもらう」
教壇に立つ蒼ちゃんは、そう言うとスーツの内ポケットから茶封筒を取り出した。
「この中にクラス全員の名前を書いた紙が入ってる。俺が今から1枚だけ取出すんだが、そこに名前が記された奴にクラス委員になってもらう」
『えぇぇぇーーっ!?』
クラスみんなの叫び声がこだまする。
「わ、私!立候補します」
「いえ!私がっ!」
爽やかイケメン教師の蒼ちゃんに、積極的な女子は自ら委員を勝手出るのだけど
「いや。その申し出は大変有り難いが、公平を期すためにここは“くじ引き”で決めようじゃないか」
蒼ちゃんはそれをやんわり断り
「恨みっこなし、だからな」
イタズラっ子のような無邪気な瞳で、茶封筒から1枚の紙切れを取り出した。