来い恋

グラタンが出来上がるまで

実はここ1週間、亮輔さんとはプライベートでは会っていません。
あっ、言い方間違えた。
会えないんです。
私は庶務だから残業なんか棚卸の時くらいでほとんど定時であがれる。
でも亮輔さんは違う。
とにかく忙しそうなんです。
3週間後の催事が営業7部の担当になってるため
外出も多いし、来客も多い、帰りも遅い。
亮輔さんとはメールのみで内容もおやすみくらいだ。
それに話すと言えば会社での仕事の話のみ
四宮さんの件で
「ご褒美あげるから・・・楽しみにしてて」
なーんて言われたけど
この忙しさだ、きっと言った事も忘れているでしょう~~
ホッとする気持ちとちょっと残念な気持ちが入り混じった
複雑な気分です。

今日も亮輔さんはほとんど事務所に顔を出さずだった。
私は重い腰を上げまだ仕事をしている次長たちにあいさつすると
退社した。
守衛さんに挨拶し会社を出ると偶然、亮輔さんと小野寺主任が外出先から
帰ってきた。
「課長、主任お疲れ様です。」
「お~~吉野。今帰りか。お疲れな」
主任はすれ違いざまに
私の肩をポンと叩いて守衛さんの前を通り過ぎた。
「はい。お先に失礼します。」
 亮輔さんは主任の少し後ろでゆっくりした足取りですれ違いざまに
小さな声で
「お疲れ・・・もう俺マジで限界。疲れたから今日癒されに行くから晩御飯たのむわ」
そう言うと守衛に「お疲れっす」といってちょうど来たエレベーターに乗り込んだ。

今日、癒されに行くから晩御飯たのむわ・・・?
ちょ・・ちょっと今日?え?マジで?
時計は6時を少し回ったところ
とにかくスーパーに行かなくっちゃ。
気がつくと走っていた。ドキドキしてるのは走ってるからなのか・・・
それとも会えるうれしさなのか・・・
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