ひつじとライオン

薄くはなったけど、茶色い染みみたいになってしまったそれ。
つけおき、手洗い。それ以外の方法が分からなくて、綺麗にすることが出来なかったそれ。


紺と白のチェック模様のハンカチは、よりにもよって白の部分が茶色になってしまって、とてもじゃないけど誤魔化せない。
そもそも誤魔化すというのも如何なものか。


じっと数秒見た後、麻友へ顔を向けて、「この状態で返してもいいものかね?」そう訊ねれば、「何を今更」と最もな返事が返って来た。


「いや、さっきまではさ、見つけるぞ!ってことだけで頭いっぱいで」

「うん」

「でもいま、コイツのこと思い出してさ」


アンタらしい、と笑った後、麻友はあたしの手からハンカチを取る。
そしてうーんと顎に手を添えて、


「これはブランドですねぇ」


と。


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