【完】私と先生~私の初恋~
その日に限って友達がつかまらず、部屋で何もする事もなくボーっとしていると、不思議と睡魔が襲ってくる。

ベットにつっぷしていると、私はいつの間にか寝入ってしまっていた。


眠ってからどれ位か経った時、私は体に感じる違和感で薄っすらと目を覚ました。


「…?」


…誰かが私の体を撫で回している。 恐怖と混乱が、私を襲った。


「ハァ…ハァハァ…」

気味の悪い息遣いだけが、かすかに聞こえてくる。


瞬間、あの男が私の背面を触れるか触れないか位の手付きで弄っているのだ、と気がついた。


恐怖と気持ち悪さで、すぐにでもその場を飛び出したかった。


しかし、当時の私は何故か、寝たふりをしなきゃいけない!と咄嗟に思い込んだ。


ただ漠然と、起きてるとわかったら大変な事になる…そういう考えしか浮かんでこなかったのだ。


嫌悪感を必死に堪え、ひたすら寝たフリをしてやり過ごす。


あまりの吐き気に限界を迎えた頃、玄関から母が帰ってきた声がした。


すると、男の手は一瞬ビクっとし、物音を立てないように静かに部屋から出て行った。


私は例え様のない感情を抑えることができず、必死に声を押し殺して泣いた。


高校3年が始まる。


私はあの事件があって以来、夜家で眠ることが無くなっていた。


正確には、家で一夜を過ごすという事が出来なくなっていた。


学校やバイト、友達との約束が終わると、お風呂と必要最低限の荷物だけを取りに帰って、夜間は体を休められそうな場所を見つけてはジッと座って朝まで過ごした。


友人達の家にも泊めてもらった事もあったが、やはり迷惑になる事を考えると、次もまた甘えるということは出来なかった。


余りにも田舎だったため、夜9時を過ぎた頃には外に人出は無くなり、おまわりさんが見回りをするということも無かった。


私は噂にならないように必死に身を潜めて、毎日ジッと耐え続けた。


先生との毎日続けていたメールも、いつのまにか2.3日に一回返事を返す位になってしまっていた。


心がボロボロになっていくウチに、何故か先生に迷惑がかかるような気がして、不本意に返事を減らしていたのだった。


表向きには何事もなく過ごし、一歩裏に帰るとそんな生活を送っているという心労は、並大抵のものじゃなかった。
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