【完】私と先生~私の初恋~
「こんなところに一人で何をやっているんですか?」


先生は私の横にチョコンと座ると、ニコニコしながら質問をしてくる。


特に何もしてません、ボーっとしてました。と思いつつも言葉には出さず、一瞬間をおいて私は逆に質問を返した。


「先生こそ、何してるんですか?」


「姿が見えたので、お話しに来てみました。」


わざわざ自分と話すために降りてきたんだ…そう理解したとたん、私の心臓は、ギュッとなった。


「中学校はどうですか?楽しい?」


「…思ってたよりは、楽しく無いです」


「部活は?」


「…帰宅部です」


理由のわからない心臓の締め付けにクラクラして、ただでさえ少ない口数がもっと少なくなる。


せっかく来てくれたのだし、先生ともっと沢山話がしたいのに、言葉がスラスラ出てこない。


先生は気を使ってか、色々と話しかけてくれる。


それでも、二人の間に沈黙が流れるのに時間はかからなかった。


完全に会話の流れが止まってしまうと、更に何を話せばいいのか解らなくなる。


何か話さなきゃ…このままじゃかなり気まずい…


頭の中で軽いパニックを起こしながらふと先生を見ると、先生はやっぱりニコニコしながら校庭を眺めている。


その顔を見てたら、何だかこのまま沈黙でも構わないんじゃないかと思えてきて、私もまた校庭を眺め始めた。


いつの間にか、胸の締め付けも消えていた。


階段の日陰を通り抜けていく風が心地よくて、日差しは暑いけど爽やかな晴れ…
なんとなく眺めていた校庭の景色がまったく別のモノに変わった様な、不思議な感じがする。


先生といると心地がいい。幸せな気分になるな…


そこでようやく私は、今までの先生への気持ちは恋心だったんだと自覚をした。
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