【完】私と先生~私の初恋~
「はいこの通り。無事に帰ってきましたよ。


…お母さん、どうですか?」


私はリビングの方を振り返った。


「もう…大丈夫だと思います。」


「そうですか、それならよかった。


……じゃあ行きましょうか。」


「あ、荷物取ってきます。」


「あ、早苗さんちょっと待って」


リビングに戻ろうとした私を呼び止めると、先生は一枚の封筒を差し出した。


これは?という目で先生を見る。


「領収書です。


念の為、書いてもらいました。


お母さんに渡してあげてください。」


あぁなるほど…そう思いながら封筒を受け取ろうとして、私はドキッとして固まった。


差し出した先生の手のひらが、傷だらけで真っ赤になっている。


ビックリして先生を見た。


先生は相変わらずニッコリ微笑んで、「早く」とだけ言った。


「先生…手…」


「いいから、早く。僕は車に行ってますから。」


先生が後ろ手に、玄関を開ける。


私は封筒を受け取ると、慌ててリビングに戻った。

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