カッパァ華
風呂から上がった政吉は、居間にある妻の仏壇に手を合わせていた。



「俺らの想い出の山が燃えてしまったんや……お前とはこの村で知り合ったし、あそこにも一緒によく行ったのな……」



そう話す政吉の顔は、あまりにも悲しい表情をしていたのだ。



何者かの手により奪われた想い出は、行き場のない辛く悲しい結果になる。



例えそれが故意にではなかったとしても、何かを消すことは、それに想い出深い者に紐付いて行き、悲しい想いをさせてしまうことがある。



政吉は、悔しさを噛み締めながら、居間の電気を消していた。



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