解けない恋の魔法
 残された私と宮田さんに、しばし沈黙が流れる。
 この空気は、気まずさ以外の何物でもない。

「あれで……良かったの?」

 二階堂さんがいなくなった後、彼の口からボソリと言葉がこぼれ落ちた。

「良いですよ。というか、私にあれ以上なにを言わせたいんですか」

 これ以上こうして会話しても、喧嘩にしかならない気がして。
 この場を立ち去ろうと歩き出した私の腕を、宮田さんがグッと掴んで自分の胸に引き寄せた。
 私を抱きしめる彼の腕に力がこもる。

「今日は緋雪に会えると思って楽しみだったのに……サイアク」

 少し身体を離して私を見下ろす彼の瞳に、私が写る。

 最悪なのはこちらも同じだ。
 なにか言わなければ、と思った矢先、彼は私の唇を貪るように奪った。

 しばらくキスを繰り返し、最後にチュっとリップ音を立てて彼が私からそっと離れる。


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