解けない恋の魔法
 宮田さんはハンドルを握り、喧騒が未だ落ち着きを取り戻さない夜の街を走り抜ける。

「あの……どこ行くんですか?」

 なぜか運転中無言になっている彼の横顔を見つめつつ、静かに問う。

「あー、そう言えばそうだ。どこに行こうか」

「え……」

 そっか。そうだった。
 この人はこういう人だ。中身は変人というか、なにを考えてるのか本当に読めない。

「僕のマンションにしようか」

 前を見据えたまま運転する彼が発した言葉は、幻聴なんじゃないかと一瞬思ったけれど。

「マンション?」

「うん。僕の部屋にまだ遊びに来たことなかったよね。だから招待しようかな」

 一気に緊張する私になど気づいていないのか、淡々とした口調で彼がそう言い、車は真新しそうなマンションの駐車場へと滑り込んだ。


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