解けない恋の魔法
「緋雪、気に入ったならここに越して来る?」

「え?! 私とルームシェアですか?」

「なにをバカなこと言ってんの! 僕たちが一緒に住む場合は、“同棲”になるだろ」

 肩を揺らしてケラケラと笑う彼を見て、拍子抜けしたと同時に私の緊張もほぐれた。
 私がはっきりと返事をしないまま、その提案が立ち消えになったことにもホッとする。

「いつも事務所じゃコーヒーだけど、今日はビールがいい?」

 ソファーに座る私に、彼はそう言ってキッチンからグラスと冷えた缶ビールを持ってきた。

「ありがとうございます」

「パーティのとき思ったけど、緋雪はお酒飲めるよね?」

「あ、はい。それなりには」

 コツンとお互いにグラスを合わせ、注がれたビールを口に含む。

 ゴクゴクと美味しそうにビールを飲み込む彼の喉仏が、やけに色っぽい。
 隣に居ながらそれを見てしまうと、自動的に心拍数が上がった。

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