解けない恋の魔法
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「お電話でもお話しましたが、今日は依頼したデザインの件で伺いました」

 最上梨子デザイン事務所に赴くと、マネージャーの顔をした宮田さんが現れ、今度はすぐさま例のアトリエ部屋へと通された。

「最上先生がデザインするドレスがどんなものになるのか、今から楽しみです」

 営業スマイルを見せるも、目の前のソファーに座る宮田さんは首をかしげながら、なにか面白いものでも見るような視線を私に向けてくる。

「あのさ……」

「はい」

「そういうの、やめようよ」

「……はい?」

「だから、“最上先生”とか、そういうの。なんかもう……聞いてると気持ち悪くて背中がゾワゾワしてくるから」

「すみません」

 一応、かしこまって“先生”と付けてみたのだけれどお気に召さなかったようだ。
 しかし、気持ち悪いとまで言わなくてもいいのに。
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