解けない恋の魔法
 袴田部長は、四十歳で独身の男性。
 元々、インテリアデザイナーを目指していたらしい。
 十年ほど前、違う会社から引き抜きで我が社へ来た人材だということは、他の人に聞いて知った。

 確かに部長は、何を選ぶにしてもセンスがいいし、アイデアも素晴らしい。
(だから部長にまで成れたのだと思う。)

 それは今では社内でも有名になっている。
 そんな部長のもとで一緒に仕事がしたくて、私は企画部への異動を希望して現在に至っている。

 部長が面白いと感じたもの、いけると思ったプランは実際に当たることが多い。

 だから私は純粋に部長を尊敬している。先見の明があって仕事熱心だから。
 もちろん、その尊敬の中に恋愛感情なんてものは微塵もないけれど。
 何より私は自分の作ったプランでお客様に喜んでほしい。 この仕事をしていて一番に思うことはそれだ。

 部長に言われるがままに雑誌の取材を受けてしまったけれど、あとでこれだけは凄く後悔した。
 出来上がってきた雑誌を見ると、予想以上に私の顔写真が大きかったから。
 もっと目立たなく、小さく載るものだと思っていたのに。

 何とか断ればよかったと、かなり本気で思ったけれどこうなってしまっては後の祭りだ。
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