俺様とネコ女
「決めた」

駐車場に車を停め、直哉を連れて百貨店の本館の正面入り口から入ってすぐの場所にある、有名なジュエリーショップへ入った。


「ガチの求婚?」

「違う」

「だってこの店、芸能人が婚約指輪買うブランドだろ」

「そうなのか?」

あいつのこと、あいつと一緒にいるときのことを思い出すと、何を送りたいかすぐ決まった。その理由を言ったら、あいつは怒るかスネるかだな。

店内を一通り見て、一番気に入ったものにした。少しも迷わなかった。


「かなり高いぞ?」

「ああ」

「この値段、給料3か月分どころじゃないぞ」

「俺の個人インセンすげえの知ってるか?」

「え。いくらだよ」

「言わねえよ」

「教えろよ」


顧客カードを記入させられ、カードで支払いを済ませ、濃紺の小さな紙袋を受け取った。直哉がそれをじっと見つめる。


「それあげて告白するのか?そりゃそうだよな。がんばれよ」

わからない。わからないが、明日ここに会える。それだけでこんなに胸を躍らせている。

あいつも、俺のことが好きだと思う。どの程度かが問題だが。


あいつに好きだと伝えたら、今のこの関係が、どう変わるのか—————

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