俺様とネコ女
えー、とこちらを振り返りながら残念そうに3階で降りた直哉は、扉が完全に閉まる直前「またね」と小さく手を振った。

一人になって、小さいけど深いため息をひとつ。


コウとのことは誰にも言わない。コウが言うなって言うから。

本当は、直哉を引き止めて相談したかった。社内恋愛しないのは絶対なのかって。私のこと、何か言ってなかったかって。


一気に7階まで上がったエレベーターの扉が開いた。


営業1課の前を通ると秘書課がある。秘書課へ向かいながら、全開のドアから1課に目をやる。

既に出勤していたコウの姿を見つけて心臓が騒ぐ。真剣な表情に、その心臓がキュっとなる。


「あ!こころちゃーん」


ブンブンと手を振るガタイのいい男。昨日から、嫌だなあの人。恥ずかしい。

でもそのお陰でコウが私に気付き目が合った。全く表情を変えないコウに、ペコリ。精一杯の会釈をして通り過ぎた。
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