秘めた恋
数冊漫画を抱えて部屋に戻ると東郷くんはクッションを枕にし
寝転んでいたので思わず仰天した。

私は、恐る恐る腰掛け「あの、漫画読まないの?」と彼に尋ねると
「あ、仕事の手伝いで疲れてしまって。すいません、先に横になってます。」と
言われた。

「あぁ、そうだったね。別に気にしなくていいよ。お疲れ様。」と言うと
私は座り直し漫画を開いて読み始めた。

すると彼が「あの・・・美雪先輩も横にならないんすか?」と聞いてきた。

「え?私は・・・漫画読んでるから。」

「あ、いや、横になりながら漫画を読んだ方が楽ですよ。このクッション結構でかいんで。」

ということは東郷くんの隣に寝転がるということであって
めっちゃ距離が近くなって逆に漫画に集中できなくなりそうだけど・・・と思い
返答に困っていると彼が「ほら、来てくださいよ。」と彼が私の腕を軽く
引っ張ったので私はバランスを崩しそのまま「わかったわよ!寝転がればいいんでしょ!」と言って
半ばヤケになってクッションに頭を預けた。

隣に彼がいても私は素知らぬ振りをしてそのまま漫画を読み続けていると
突然、彼が私に軽く抱きついた。

「え?」

私は彼の方を見ると「美雪先輩、漫画ばっか読んでないで俺にもかまってくださいよ。」と
言ってきた。

はーー?寝るんじゃなかったの!?

「あの、漫画読んでるから」

すると彼は私の持っていた漫画を奪うと後ろに隠した。

ちょっと・・・。「漫画を返してよ。」彼の方を睨んで言うと彼は「いやです。」と言って
私をまっすぐ見てきた。

こんなイケメンと間近で見つめ合えるほど私は出来てないのであって
目をそらしながら「漫画返して。」とつぶやくと「美雪先輩、こっち見てください。」と
言ってきた。

「いやだ。」

「お願いですから。」

「絶対いやだ。」

なんか、この後何か起こりそうな甘酸っぱい恐怖が私の中で広がって
私は頑なに自分の理性を守り続けた。

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