秘めた恋
結局、素振りにも集中できずコーチも今日はいなかったので
ベンチに座ってただぼーっとしていた。

だけど自然と目が彼を追って・・・。

いや、彼がコートに入ると周りから歓声が上がるから
ただ反応してるだけだ。そう、私の意思じゃない。

彼のフォームは綺麗だった。無駄な動き一つなく
ボールの動きに俊敏に反応し、打ち返す。
時々、意地悪するように相手を左右に翻弄させたり、
ラインギリギリのところに打ち返したりする。

「ああゆうとこ、性格出てるなぁ。」

嬉しそうな顔、汗が飛び散ってすごく爽やか。
歯並びが整っているため笑うと本当に甘いマスクになる。
やだな、何考えてるんだろう。

彼が試合を終えるとタオルで顔を拭き、一年生の女子達に声をかけられ
笑顔で会話を始めた。

やだな、なんか見たくない。

私といる時よりも笑顔が自然で楽しそうに見える。

私は背中を少し折り曲げ両手で体を抱きしめながら下の方を向くと目を閉じた。

まただ、心臓がドクドクと鼓動し始めた。


なんで、また。


あぁ、この呪縛から逃れたい・・・。
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