秘めた恋
「ねぇ、喫煙所に行ったっきり、誰も戻って来ないけどどうしたのかしら?」

数十分経っても誰も戻って来ないため水木さんが言葉を発した。

「私、様子見てきます!」

そう言って席を立つと杉並さん一人が戻ってきた。

彼は高梨さんの持ってたスケッチを持ってぶつくさ言いながら部屋を出て行った。
私は残った二人のことが気になり、小走りで喫煙所まで向かうと
古橋さんのどなり声が聞こえたので思わず物陰に隠れた。

「みんなの前で名前で呼ぼうとしたら嫌がるし、
なんで付き合ってること秘密にしたがるんだよ!」

「それは・・・」

何、これどうゆうこと・・・?

「あの時だって、急に色気づきやがって。
化粧も全然似合ってねーっつーの。」

「・・・・・」

「お前見てるとイライラすんだよ。
そんなに他の男によく見られたいか!
そんなに他の男と仲良くしてるとこ見せつけたいか!!」

「古橋君・・・・・」

なに、これ。二人は付き合ってたの・・・・?
だけど・・・

「杉並さんと仲良くやれよ。」

すると喫煙所から古橋さんが出てきて、
一人取り残された高梨さんがその場で泣き崩れた。

私は手で口を覆うと誰にも気づかれずに涙を流した。

何度も「大樹君・・・」と「ごめんなさい。」と
嗚咽交じりに言う高梨さんの切ない声が聞こえ、
私も涙が止まらなかった。

古橋さん、ずっと高梨さんを目で追ってた。
本当はまだ高梨さんのことが好きなんだ・・・・。

「う・・・」

彼を好きにならなきゃ良かった。
いつかは彼と仲良くなれると思ってた。
けど、彼に見向きもされてなかったなんて。

なんて私、愚かなんだろう・・・・。






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