彼方の蒼

 先生は同窓会の案内状の裏表を代わる代わる見ている。
「今どき、往復葉書……」
「うん。それは僕も思った。……じゃなくって!!」
 立ち上がった僕は木目調のテーブルに両手をつき、先生を見据える。
「先生のところにも知らせが入っていたんじゃない? で、行くの? 行かないの?」
 日程はアート制作の終盤に見事に被っていた。
 日帰りで行くのは自家用ジェットを所有している金持ちでもない限り無理だ。

「中学を卒業して丸四年以上になるんだよ。進学した人もいれば高卒で就職した人もいる。みんな先生に今の自分を見てもらいたいんじゃないかな。先生にとっても刺激になるんじゃないかな」
 僕らしくもなく、そんなことを口走っていた。
 それは先生にも伝わったようで、じいっと見られて思わず横を向いてしまった。

「あ、別に、先生にも都合があるよね。第一、作品進行に影響するし」
「行きます」
「ほんとに? やった!」

 誰に頼まれたわけじゃないけど、まるで僕の説得に応じてもらえたみたいでちょっとうれしかった。
 そもそも、僕と先生が同じ島のイベントで活動しているなんて誰にも話していない。
 先生は招待作家だから島のイベント情報として告知されているけど、僕まで参加しているとはみんな思っていないはずだ。

「できれば、惣山くんと一緒に行きたいのですが」

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