彼方の蒼
 次の週明け、珍しくカンちゃんが『あとでつきあえ』なんて言ってきた。

 ……あとって?
 気になってしかたのない僕は、休み時間にメール攻撃をしかけた。

『カンちゃん なにごと? ハル』
『急につきあってなんて言われても……困るよ、そういうの』
『君の気持ちにはこたえられない』
『ハルトでございまーす(←裏声)』

 もう思いつくまま送りつけてやった。
 いくつめかでカンちゃん、陥落。
「ハルー!」
 犬じゃないんだから、そういう呼びかたはよせやい。
 その直後にメール着信。

『おまえセンスなさすぎ』

 カンちゃんは涼しい顔して携帯をたたみ、机のなかにしまった。おしまいの意思表示。
 同じ教室にいるのに、僕らバカです。ハイ。



 カンちゃんの言ってた『あと』というのは、放課後のことだった。
 机をくっつけて、カンちゃんと、それからなぜか堀芝サンが僕の向かいに座った。
 しかも、教科書やワーク持参。……ああ、そういうことか。

「ハルってどうせ家に帰っても、受験勉強なんかしないんだろ?」
「それほどでもないよ」
「バカ、照れるなよ。こっちまで照れるじゃねーか」
「照れ屋さんなんだから、もー」
 僕らの本気とも冗談ともとれる、相変わらずのやりとりを見た堀芝サンは、頬をうっすらと染め、感激の面持ちだった。
「うわあ! この掛け合い漫才をこんな近くで見れるなんて、わたしってラッキー」
 漫才って、キミ。
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