彼方の蒼
「倉井先生さ、きっと知ってたんじゃないかな。原因が自分にあるってこと。……そうなんだよね? わたしでも、そう思ったもん」

 僕は否定も肯定もしなかった。

「わかってたし、そういうの、どうしようもなくって。それに……他の先生たちに立ち向かったって、敵わないって知ってて、それでも正面から抗議したんだ。小柳くんのことを守ろうとした」

 堀芝サンは顔をあげて僕を見た。クスリと笑った。
「そーやまくんと似てる」

 そのあとは、目を逸らさずに一気に言った。

「あのあと、すごかったよー。1組はもちろんだけど、他のクラスまでいっしょになって、教務室に加勢? 応援? しにいってさあ。わたしもそーやまくんに報告入れる都合もあったから、もちろんそのなかに加わっていたけど! 卒業間近に団結したね!! 訴えたね!! もう、大騒ぎ。午後からは授業にならなかったよ。まあ、受験のストレスを発散したかっただけの人もいたみたいだけどね。はー……すごかった」


 興奮口調とはうらはらに、堀芝サンはしまいにはうなだれてしまった。

 これで終わりのはずがなかった。
 肝心なことを言っていないのがなんとなく伝わってくる。
 どうしようどうしよう、という堀芝サンの心の声が聞こえるようだった。
< 66 / 148 >

この作品をシェア

pagetop