第00夜
そしてどのくらい走ったのか。
化物の声は遠ざかり、明葉は肩で息をしながら立ち止まった。
「………」
どうやら逃げ切ったようだが…。
明葉は息を整えると、再び廊下を進み始めた。
「美由、何処…?」
面する教室を確かめながら進む。人が身を潜めている様子は無い。
校舎はどのくらいの広さなのか、今居るのは何階なのか?
わかっていれば楽になりそうだが明葉は全く見当がつかなかった。
そして悪夢の空間が、昨日と同じ姿を留めている保証は無い。
時々背後を振り返っては、化物を警戒しながら進んだ。
やがて、明葉の前に階段が現れた。
「やっぱり…他の階もあるんだ」
どうしよう‐。
階段は上下の階へ伸びている。
明葉は階を移るか悩んだが、校舎一階から探してゆく事にした。
階段を下り始める。
階段は廊下より薄暗く、足下を不安にさせる。
踊り場を経て下の階に着くと、明葉は壁際から辺りの様子を窺った。
…誰も、居ない。
…何も、居ない。
上の階と変わらぬ廊下の姿。
下の階へと続く階段が、ココが一階でない事を示している。
明葉は再び階段を下り始めた。
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