兄貴がミカエルになるとき
公園内の芝生の広場には、休日でもないのにたくさんの人が水着や半裸姿で寝転んで読書や日光浴を楽しんでいた。

ここだと178センチの女と188センチの男が歩いていても、誰も気にも留めない。

私は両腕を空に向かって「エイっ」と伸ばし、背伸びした。

見上げる空が、シャイラの分だけ広く感じる。

生きる領域が広がって、それまで大人しかった細胞も眠りから覚めたかのように活動し始めている。

自分の細胞が楽しそうだ、と感じる。

「目立たないって楽チンでいいなあ。なんかのびのびできる」

いつも縮めている体を気が済むまで、うーんと伸ばしてみる。

「日本でものびのびしているじゃないか」

トオ兄は組んだ両手を上に伸ばし、体をひねってストレッチを始めた。

< 110 / 307 >

この作品をシェア

pagetop