兄貴がミカエルになるとき
「ヘアメイク。ハリウッドランジェリーのショーを担当していたヘアメイクの男が、次はシェリルで仕事をするって言ったらしい。シャイラっていう神秘のモデルも来るから楽しみだ、ってな。そしたら社長と一緒にショーを見に来ていたその息子が、アシスタントで一緒に入れてくれないかって頼んだんだって。最初は断ったらしいけど、次のハリウッドランジェリーのメンズの仕事を条件に、彼の願いを聞き入れた。親父も息子には甘いね。そのヘアメイクはハリウッドランジェリーの男のモデルに夢中なんだよ。あ、つまりそっち系ね。もちろん彼はアシスタントなんてできないから舞台の隅でショーを見ていたってわけさ。そのおかげで素顔を見られなかったのは不幸中の幸いだ」
「シャライに興味を抱いた人間がたまたまハリウッドランジェリーという会社の息子で、たまたま咲季と同じ高校で、たまたま本の趣味が全く同じで咲季にも興味を持ったってわけか」
なんだか釈然としないという顔でトオ兄が「偶然なのか」とつぶやく。
ギーコ、ギーコという音が止み、リチャードが首をかしげた。
「シャライに興味を抱いた人間がたまたまハリウッドランジェリーという会社の息子で、たまたま咲季と同じ高校で、たまたま本の趣味が全く同じで咲季にも興味を持ったってわけか」
なんだか釈然としないという顔でトオ兄が「偶然なのか」とつぶやく。
ギーコ、ギーコという音が止み、リチャードが首をかしげた。