兄貴がミカエルになるとき
「困るなあ」と心の中でつぶやきながら、床に開いた通信簿を拾おうとした途端、すかさずリカコがそれを踏んづけた。
が、次の瞬間、彼女はドタっと鈍い音を鳴らして床に尻餅をついていた。
クマの絵柄のパンティが、めくれたスカートの下からのぞいている。
その横で幸っちゃんが、「はい」と、綺麗に腰をかがめて通信簿を拾ってくれた。
「ちょっと、何で突き飛ばすのよ!」
尻餅を付いたままの状態で怒鳴るリカコのスカートの中から、クマさんがのんきそうに笑いかけてくる。
「あ、ごめんなさい。季咲良さんの通信簿、きたない上履きで踏んづけるから。でもどうしていつも季咲良さんにぶつかるの? こんなに目立つ彼女を避けられないなんて、よほどバランス感覚が悪いのね。それともよほど鈍い………」
最後の部分をわざとしりつぼみに言いながら、幸ちゃんは整った唇をキュッと上げた。
女子高校生の美しさと可愛らしさ、そして純粋さをもれなく集めたカンペキな笑顔だ、と思う。
AKBもどきのリカコじゃ到底太刀打ちできない。